きき酒師の渡邉です。
日本酒業界では、言わずと知れた久保田の純米大吟醸・萬寿。
その千寿の味わいや、飲み方、料理との相性(ペアリング)できる限り詳細に評価しました。
いわば「久保田・萬寿・純米大吟醸」に関するデータベースのようなページです。
萬寿の評判や口コミを気にしている人の参考になればと思います。
味の評価
華やかな吟醸香、上品な甘さ、深みを感じさせる味わい。
和を感じ、日本酒の伝統を感じさせる。口にするのを畏まってしまいそうな上質さを感じる。
お祝い事やお正月など、特別な日、ハレの日に飲みたい日本酒。
飲み方
飲み方ですが、こちらは純米大吟醸のセオリーどおり、花冷え(10℃)〜涼冷え(15℃)でまず飲みましょう。
このお酒の魅力である香りが、良い塩梅で感じられる温度帯です。
雪冷え(5℃程度)までいくと、香りが大分抑えられてしまいます。
冷蔵庫から出して、5~10分程度が目安です。
ペアリング
おせち料理
田作り
甘辛い味付けと、魚の風味旨みが、酒の旨みと甘さに調和してかなり美味い。
臭みも含めた魚の風味が、酒の旨み甘み苦味とあいまって、快い味わいに昇華されている。これは驚いた。
魚の臭みが残るかなと思ったけど意外だった。
昆布巻き
昆布のクセの苦い感じが残るが、味付けの甘みと調和して悪くない。
黒豆
酒の膨らみや華やかさが引き締まって感じられ、酒が薄く感じられる。黒豆の甘さが強すぎると、酒の味わいがあまり感じられなくなる。
たたきゴボウ
甘辛い味付けを接点に、ゴボウの風味に酒の上品な甘さがいい塩梅に重なって美味。
ブリの塩焼き
新鮮な沖ブリ(勝浦産)
シンプルなブリの旨みに、酒本来の甘みと、華やかさを添えてくれて、上品な仕上がりに。美味。
ブリ照り焼き
タレの甘みと、酒の華やかさ。ブリの旨みと、酒の深い味わいが調和して、かなり美味い。最高。
おせちの酢の物
お酢の酸味によって、どこか力んで少しこわばってしまった口の中が、酒の上品な甘さによって解きほぐされる。乾き切った口内が、冷たい水で潤されたような癒しがあり、その感覚がとても美味に感じられる。
日常の料理
低温調理レバーの甘露煮
レバーのクセに負けてしまう。
低温調理鶏胸肉・ソーセージ風味
セージと、ナツメグと、ガーリックチップで味付け。セージの香りが、吟醸香と甘さに調和して合う。新鮮味のある食体験ができる。
低温調理鶏胸肉・プレーン味(塩のみ)
プレーン味だと普通で特に面白みはない。ハーブの香りが接点になっていて、それが肝のようだ。
切り干し大根
醤油の旨味や大根の甘みを接点に酒の味わいと調和しつつ、萬寿の上品な甘みと深い味わいを余韻で感じ、非常にリッチな食体験を感じられる。
とんかつ
肉の旨味、衣の脂味、ウスターソースの甘み、それぞれが同じく酒の旨味や甘みと調和しつつ、萬寿の華やかさや深い味わいがそれらを包み込むように全体の味覚をまとめあげ、非常にリッチなひと口として完成する。同じ久保田の純米吟醸 千寿とは違い、後味で衣の脂に負けることもなく、とても見事な好相性を示す。
刺身
同じ麹を使った醤油を接点に味わいが調和。刺身の個性となる風味に干渉することなく、酒の上品な味わいが重なり至福の余韻を感じられる。
寿司
醤油がいい繋ぎとなり味わいが調和する。さらに酢飯の酸と酒の甘みが重なり、お互いの味わいを補完し合った、上質な味わいに昇華される。その余韻に、しばし恍惚としてしまった。
キャンプ・燻製
キャンプでの燻製との相性もじっくり評価した。
イカの燻製
水分が抜け旨味が凝縮されたイカの燻製と、萬寿の重厚で複雑な味わいとの、深みのある調和。そして、甘さを思わせる桜木の燻製香と、萬寿の華やかで上品な吟醸香が混ざり合い、非常に心地良い余韻となりうっとりする。
手づくりいぶりがっこ(燻製たくあん)
合う。華やかさと、たくあんの塩味、甘みが調和してとてもうまい。
燻製チーズ
燻製はチーズが1番合う。チーズの芳醇さに覆い被さるようにして酒の甘みや吟醸香が広がって、心地いい。
程よい甘みのある「さつま揚げの燻製」とも非常に相性が良く、ぜひ試してもらいたい見事なペアリング。
久保田 萬寿の賞味期限
冷暗所に保管していれば賞味期限はありません。
ただ、未開封でも、ゆっくりではありますが、時間と共に味が変わるのは間違いありません。
どのような味の変化が起きるかは、元々の酒質や、温度などの環境要因が複雑に絡むため、一概にはいえません。
適切に保管されていた日本酒は、時間が経つとカラメル、ドライフルーツ、醤油、椎茸、などに例えられる風味が生成することが多いです。
この変化をあえて起こし、熟成古酒として販売している製品もあります。
古酒の味わいはかなり個性的で、好き嫌いが分かれるところです(私は好きですが)。
家庭での熟成は、お酒の作り手(萬寿の場合は久保田(朝日酒造)の会社の人)の意図しない味になることもあるので、本来の味を楽しみたいのであれば、できるだけ早めに飲んだ方がいいです。目安としては1年以内といったところ。
ただ、前述のとおり賞味期限があるわけではないので、1年を過ぎてしまったからといって捨てる必要は全くありません。新酒の頃の味と変わってしまっているかもしれませんが、衛生的に飲めないことは全くありません。味の変化が、飲み手の好みに合っているかどうかは運次第、といったところです。
保管の際は、高温や光(日光・蛍光灯)が当たる場所は避けてください。明らかな劣化の原因となります。