利酒師の渡邉です。
JALのファーストクラスでも提供された大吟醸「箱入り娘」は、福岡県は八女市の酒蔵・高橋商店の日本酒。高橋商店は繁桝(しげます)のブランドで展開する日本酒でよく知られており、福岡県内でトップクラスの知名度を誇る酒蔵です。
本記事では、その大吟醸「箱入娘」の官能評価と料理との相性(ペアリング)について徹底的に解説。
いわば日本酒「箱入娘」に関するデータベースのようなページです。
ファーストクラスにも採用された日本酒
「箱入娘」は平成2年に日本航空(JAL)国際線ファーストクラスの機内酒として採用されました。
詳しくは後述しますが、実際に口にしてみると、確かにファーストクラスに採用されるのも納得の、誰にでもわかるレベルでプレミアムな味わいが感じられます。
原料米は山田錦が100%、精米歩合は40%です。
繁桝(しげます)の日本酒・箱入り娘の評価
メロンをさらに上品にしたような華やかで穏やかな甘い吟醸香。
旨味と甘味の塩梅は見事でまったく角がないけれど、線が細いわけでもなく、その絶妙なバランスが品の良さを感じさせる。その大吟醸らしい心地よいドライな刺激感、それがそのまま余韻まで残りそうなものだが、予想を裏切りスッと引いてキレていく。その様が見事で、一層の上品さと完成度の高さを感じさせる。
その完成度の高さゆえに、日常の酒ではないなと感覚的にわかる。
ものすごく美味しいけど、気軽に、雑に飲むのは失礼で、考えなしに普段使いするのはしのびなく感じられる。
繊細ではないけど、かなり品がいいから、料理も選ぶ。
明らかに、ケの酒(日常の酒)ではなく、ハレの日の酒(お祝い事やご馳走の時の酒)。
つまりそれは、お祝いのときや贈り物でもらえたらすごく嬉しいお酒であるということ。自分がもし貰えたら、大切に思われているんだなと、とても嬉しく感じる。お酒の味でそれが理解できる。
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大吟醸らしさに、もっと太さをもたせて幅広い料理と合わせるようにしたいなら、山廃造りの純米大吟醸・飛良泉酒造の酒などがとてもよい。
綺麗さと清澄さを求めるならこちらの「箱入娘」が相応しい。
日本酒単体で見るか、食中酒として見るかで少し評価が分かれそうです。
飲み方・料理との相性/ペアリング
飲み方
飲み方は冷酒。
冷やしすぎると香りが弱くなっていくので、花冷え(10℃)〜涼冷え(15℃)で吟醸香をよく感じて欲しいが、雪冷え(5℃)から始めて温度の違いによる味わいの違いを楽しむのもいい。冷蔵庫から取り出せば温度は自ずと上がっていくので。
前述のように、吟醸香を思う存分楽しみたければ、ワイングラスのような香りが感じやすい酒器を使うのもいい。
料理とのペアリング
真鯛の刺身
シンプルな真鯛に上品な吟醸香を添えることで、より高級感を感じられる。
大吟醸の上品さが最大限に引き立てられ、非常に良いペアリング。
カンパチの刺身
カンパチの脂を少し切りきれない感じはある。酒をある程度多く口に含めば、いい塩梅になる。
悪くはないが、カンパチの脂は大吟醸の華やかさを活かしきれないように感じる。
サーモンの刺身
サーモンの甘い脂と大吟醸の華やかな香りが調和するが、脂を切るには少し多めの酒量を口に含む必要がある。
寿司
刺身と同様、真鯛やえび、イカなど、シンプルな味わいで脂が少なめのものとの相性はよい
酢もつ
さっぱりした酢物に、大吟醸の華やかさと上品な甘さが添えられて、良いペアリング。
塩トマト
塩トマトの酸味と旨味と塩味、大吟醸の甘味と華やかさがお互いを補完し合い、万人がうなる美味しさが口に広がる
カツオのたたき
カツオのクセに少し負ける。薬味のニンニクスライスにも少し負け、総合的にややミスマッチ。
ヒレカツ
あっさりしたヒレ肉とそれを覆う衣の油を切るのに充分な線の太さはある。そこに、ソースの甘さと吟醸香が調和して悪くない。
天ぷら
野菜や白身肉、白身魚の天ぷらの油分を切って、味わいに吟醸香の華やかさが添えられてよい。和の雰囲気もグッドペアリング。
【総評】
野菜や脂身の少なめな肉や魚と合わせるのが、大吟醸の華やかさ・高級感を感じることができる。
フライ(揚げ物)と合わせられるぐらいの厚さ・ドライ感はあるが、クセの強い魚介類の脂質と合わせるのには注意が必要。
野菜や白身肉、白身魚の天ぷらとは味も雰囲気もグッドペアリング。